EC通販、ネットショップを運営している事業者にとって、物流コストや配送料の値上げの影響が特に大きいと思います。
主要な配送大手3社の送料値上げの市場の背景から、今後検討すべきECの送料の決定方法から見直しをする際に参考となる情報をまとめました。
1.配送料の値上げによる影響や送料無料に対する各社の取り組み状況について
配送大手3社の過去の配送料の平均価格をみていくと、2017年10月にヤマト運輸が基本運賃の値上げを実施した影響により、佐川急便、日本郵便の2社も実質的な値上げを行なっています。
1)配送大手3社の値上げから見える影響
大手3社の値上げから見えるのは総量規制、運賃値上げ、人員不足による影響が最も大きいとされ、EC通販拡大の反面で商品の配送量も増加しており、より運送コスト拡大が想定されます。
商品を販売する事業者だけでなく、購入する消費者への送料値上げの負担が目に見えない形で増加している影響により、購買ニーズが減少しているケースも考えられます。

2)消費税10%増税に伴う配送料の見直し
昨年実施された消費税10%への増税に伴うヤマト運輸の配送料の見直しも行われています。
公的な負担もよる配送料への影響も考慮すべき一つの要因と考えられます。
・60〜80サイズ +140円(四国・沖縄宛を除く)
・100〜120サイズ +160円(四国・沖縄宛を除く)
・140〜200サイズ +180円(四国・沖縄宛を除く)
クロネコヤマト公開資料から抜粋
3)値上げにより収益悪化が影響した実質的な値下げ
値上げを実施したヤマト運輸の収益悪化の影響により再び配送料の値下げによって、Amazonとの再取引による取扱量が増加し、他配送業社への影響が見受けられます。
4)楽天の送料無料ライン見直しにおける運営社側のサポート
楽天の3980円以上の送料無料施策のコロナ影響による安心サポートプログラムとは、支援を提供する期間は4月1日から6月30日の3か月間と、送料ラインに満たない又は大型商品を取り扱う店舗によっては価格設定の見直しが迫られる。
物流代行サービス「楽天スーパーロジスティクス」の一部出荷作業費の料金を5月1日に改定している。
同一店舗で複数回購入した際、2個目以降の商品同梱の作業費を従来の1個80円→1個65円に変更。対象は複数回注文された小サイズ商品(3辺合計100センチメートル未満)のみとなる。
ネットショップ担当者フォーラムから抜粋
2020年 楽天2半期決算報告を見ると、新型コロナによる購入者の増加で前年同期比48.1%と急速に拡大している。
2020年楽天半期決算報告書から抜粋
大きな要因の一つとして、3980円の送料無料ラインを導入した39ショップが市場を牽引していると発表している。
楽天においては主要な上位店舗が殆どの売上を占めており、マーケットプレイス全体の送料ラインには課題が残っていると考えられます。
5)配送料の無料への各社の取り組みに状況
2018年通販新聞社によると「通販・通教実施企業売上高ランキング調査」の上位300社を対象に送料無料への取り組み状況を調べたところ、78.7%に当たる236社が無条件あるいは一定の条件のもとに送料負担を免除するサービスを提供していることが分かりました。
各社の配送料の値上げの動きから「無料サービス取り止め」「無料となる購入額の引き上げ」を行った企業もある一方、多くの通販企業は従来通りに「送料無料サービスを継続している」のが実態となっています。

6)ワークマンの楽天市場の送料無料化に伴う撤退
作業服販売大手のワークマンが、楽天が出店者側に事実上の送料の負担増を強いる「送料無料」を打ち出したこともあり、2020年2月28日付けで楽天市場から撤退しています。
自社のネット通販サイトを3月16日に刷新し、商品を店頭で受け取りやすい仕組みに変え、実店舗への集客や配送コストの削減に取り組んでいます。

7)新型コロナの影響による送料無料キャンペーンの実施例
特に生活必需品となる食品から、在宅ワークグッズ、ギフト、本などの自宅にいて快適な生活や知人へのギフトまでと様々な需要に対して送料無料設定を活用した施策が取られているのが見受けられます。
情報メディア イエモネから抜粋
2.自店舗の送料値上げにより、「いくら減益しそうか」を算出していますか?
運営している商品管理ツールで、売れた時の利益が把握できていない場合、注意が必要です。
さらに価格変更した時に想定される売上見込みの把握も重要と考えられます。
配送料を値上げせざる得ない商品で、他商品の利益を差し引いてもコストになる商品は、値下げして売り切ってしまい在庫を抱えないのも一つの手段です。
大手2社の決算報告を見ても運送料の増加に伴う販売管理費の増加や売るための広告媒体費用が増えているのが見受けられます。
1)キングジム社の配送料値上げ例
新商品の投入など、積極的に商品企画から販売強化をしている反面、配送料の値上げや在庫保管量の増加に伴ってコストが増加している。
キングジム社の決算報告から抜粋
2)ベルーナ社の配送料値上げ例
全体の収益としてはホテル開業費用の影響もあるが、総合通販部門の単体においては、紙代などのプロモーションと配送料の値上げによる営業利益が減益となっている。
ベルーナ社の決算報告から抜粋
3)アスクルの配送料値上げ例
アスクルによると、2019年までに配送料値上げへの対策として、2019年1月より、配送バー改定を実施
基本配送料が無料となる注文金額を「1,900円(税込)以上」から「3,240円(税込)以上」に改定。
「LOHACO Yahoo!ショッピング店」でも、基本配送料が無料となる注文金額を「3,240円(税込)以上」から「3,780円(税込)以上」に改定したことで売上と利益率改善した。
アスクルの決算資料から抜粋
3.配送料の価格決定の考え方と見直しのポイント
過去の配送料の値上げの推移から、影響する物流コストの拡大による突発的な送料負担への影響を回避するには、日常的な商品価格や配送料の決定、配送方法の見直しが求められていると考えられます。
1)配送コストを下げる
・商品の配送代行を安価で行ってくれる配送業社を開拓する
・荷物の無駄な梱包サイズをダウンし、配送料を下げる
・段ボールなどの梱包材を取り扱っている業者を開拓し、仕入れコストを下げる
・不要な在庫スペースを減らす(梱包サイズダウンも含まれる)
・商品の「内容量」を減らす
より安全に商品を配送してくれる配送業社を確保することや、商品に合わせた梱包サイズダウンをすることで配送コストだけでなく、在庫スペースの削減も見込めます。
またダンボールなどの梱包や購入者が開封するときの容易さは、販売店舗の評価にもつながります。
また、「お試し」「初回限定」などの1回目の購入を獲得する場合、通常商品よりも「内容量」を減らして購入者は気にしないケースが多いため、配送コストを減らすことも良いと考えれます。
2)送料など価格設定を変更する
・配送地域別の送料設定
・購入金額ごとの送料設定
・各商品毎の競合調査による送料設定
・「3000円以上は○○円」「5000円以上は○○円」など、商品単価毎の購入者に合わせて送料設定
・合わせ買いやまとめ買いによる送料無料設定
地域別にかかるコストを再度見直すことで、コストが見合わない地域は値上げする、送料を下げても利益が取れる地域は値下げする、などの価格決定も一つの要因になってきます。
複数単位で一緒に購入することで、購入者によってメリットがある商品は、「○○円以上は送料無料」「○○個数以上は送料無料」なども有効な手段の一つと考えられます。
また競合店が設定している送料価格を把握することによって、利益が取れる送料設定のラインを決めることも重要だと考えられます。
3)運用の業務フロー見直し
・仕入れ〜出荷までの業務フロー改善
・RPAなどを活用した定常業務の自動化
・配送委託によるアウトソーシング化
・SCMの導入により業務改善
EC通販の店舗運営は、データの調査や作成する時間を作る事が難しく、様々な業務を兼務されているのが実情だと思いますが、特に店舗責任者は、社内資料作成に伴う情報収集を行い、上長やMD・バイヤー、物流部門の理解・協力が必要になってくるケースも多いと考えられます。
また複数店舗の運営や商品管理をする際に、CSVによる一括変更のミスのリスクは高く、ダブルチェックなどの業務フローも増えていくこと少なくないでしょう。
商品の仕入れ〜受発注〜出荷までの業務フローを見直し、コストに影響しているボトルネックをの解消やツール導入による効率化も一つの手段です。
とはいえ物流拠点を持ちづらい店舗に取っての負担は大きいため、各主要ECモールの配送委託やその他の配送業社へのアウトソーシング化も検討しましょう。
4)最終的なプライシング戦略を見直す
送料に関わるコストや業務だけでなく、送料以外で収益を上げられる可能性がある商品単価やポイント率の価格変更も有効な手段だと考えられます。
・送料は変えずに商品単価、ポイント率を見直す
・在庫量によってはプロモーション費を抑えて価格を下げる
・売上実績が高く、利益が取れる商品の競合価格を調査をし値上げを検討する
プライシングの見直しには、プロモーション費を抑えて価格を下げた方が収益が上がる、下げ過ぎていた商品の価格を値上げする、など細かい戦略が必要となりますが、
送料設定で打ち手がない場合、友好的な手段の一つと考えられます。
5)配送の品質を上げる
・玄関前などのの置き配による非対面での配送
・梱包状態の開封しやすさの利便性の向上
・ポストや宅配BOXに入るサイズに合わせた配送
・配送状況を常にわかるように通知
新型コロナなど、急激にEC通販の配送ニーズが増加した場合、購入した商品が「いつ届くのか」というのが把握できないケースや、受け取りの対面によるリスクなど、販売店舗や配送業社にとっても様々なリスクが存在しておりいます。
「非対面での配送」「配送状況がわかる」といった購入者との「連絡方法の確立」が、特に気にするであろう情報をいち早く伝えることにより、商品及び店舗レビューが高くなり、リピートする購入者が増えるきっかけになるケースも多いと思います。
4.配送業社を外部に委託する
1)外部に委託するメリット
・人件費、倉庫費用などの変動費化による財務体制の改善
・打つ流通コスト、在庫の見える化
・配送の高品質化
・売上に繋がる業務に集中できる組織の体質改善
1日の注文件数及び一人当たりの1日の作業件数が50件を超えると出荷作業が追いつかなくなるケースがよく見受けられます。
事業の成長に伴って、連日の梱包・発送作業に追われ続けるよりもバックヤード人員を売上に繋がる業務に集中させることが大事だと考えられます。
2)物流の外部委託業者を選ぶポイント
・通販、EC物流業務の受託実績数が豊富かどうか、1日あたりの出荷件数が十分かどうか
・さらに再委託している場合、直接現地の倉庫を確認する
・実際の倉庫を施策し、オペレーションに対する考え方や取り組みが十分か、スタッフの対応が適切かを確認する
・契約継続率、契約年数の実績を確認する
・お客様毎の細かいサービスに対応しているか(メッセージ、お祝い時のメッセージなどの同封ができるか、など)
委託に関する部分だけでなく、物流事業の方針、今後の事業の方向性などを共有し、品質とコストが変わるなどの余計な確認作業が発生しないようにしましょう。
3)システム利用やデータ連携が可能か
・在庫管理システム(WMS)の有無(導入企業以外は梱包作業が人力のため)
・受注管理システムとのデータ連携が可能か(独自の場合、カスタマイズの追加費用が発生)
5.まとめ
新型コロナの影響も含めたEC市場の拡大に伴う配送量の増加と、商品の仕入れの遅延や配送料の値上げに数多くの通販事業者が悩まされていると思います。
配送サイズのダウンと梱包の見直し、サイズに合わせた配送方法の選定を見直すだけでも、事業者のコストダウンや購入者の受け取り時の評価などメリットのある取り組みだと思います。
配送業務自体を委託することによるコスト削減や、出荷までにかかるコストを見直すことで、少しでも配送料の値上げの市況感に対応できる手段の参考になれば幸いです。
送料設定以外で自社に取って負担が少なく取り組みやすい手段の一つとして、プライシング戦略の見直しも重要です。
競合店舗に対する送料設定の変更したり、商品価格やポイントなどの送料以外で勝負ができる商品を見極めと、価格決定することも有効な手段だと考えられます。
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