商品を販売する時に重要なプライシング戦略(販売価格の決定戦略)には、様々な方法があり、「売れないから値上げする」「儲からないから値上げする」といった短期的な考え方によって価格決定すると、ますます売れなくなるケースが多いと思います。
自社で取り扱っている商品やジャンル毎の価格が適切に付けられているか、それによって自社にどのような影響がでるか、価格戦略の影響を常に把握しておく必要があります。
これまでの「勘」や「経験則」だけでの価格決定ではなく、市場の実データを元にした価格の意思決定や昨今話題になっているダイナミックプライシングにより、より自社にあったプライシングの最適パターンを把握する方法もあります。
売上だけでなく利益の最大化をする事業戦略から考えることにより、新型コロナウィルスなどの急激な需要の変化にも対応するための日々のデータ運用に基づいたプライシングが求められている、と考えられます。
値段を安くして薄利多売の状態に陥るよりも、適切な価格帯で、より売り上げや利益が上がる販売商品をより多く把握することが今後のプライシングに重要です。
1.本当に儲かっているかどうかを改めて把握する
価格戦略は大きくビジネスに関わってくるため、現状の収益がどうなっているか確認しましょう。
難しく考えなくとも簡単な以下の方程式で、たいていのケースの価格戦略が決まるケースが多いと思います。
利益 = 販売量 × 価格 - コスト
多くの企業では、「販売量を増やす(=たくさん売る)」「コストを下げる(=ムダを削減する)」ことに一生懸命になります。
自社の顧客ニーズに対して、「良いものを安く売ろう」「競合に対してより値引きして勝負使用」という「安売り発想」ではなく、「付加価値の高い商品を見合った価格で販売する」ことが重要だと考えられます。
1SKU単位で正確に貢献している利益を計算することは重要ですが、数多くの商品を取り扱っている小売店であれば、データ量が多いほど把握が難しいため「主要な商品の相対的な利益率」だけは把握しておくことをお勧めします。
2.価格戦略が影響する最終利益へのインパクトを把握する
各コストを産出した時に「販売価格」「変動コスト削減」「販売量の増加」「固定費の削減」といった中で、一番インパクトのあるのが、「販売価格」とされています。
例1)
正規価格 1000円 ー 変動コスト 500円 = 利益 500円
↓ 値引き後
正規価格 800円 ー 変動コスト 500円 = 利益 300円(ー200円減)
※この場合、値引き前の利益減をカバーするのに約1.7倍の売上UPをする必要があります。(500円÷300円=1.66倍)
例2)
正規価格 800円 ー 変動コスト 500円 = 利益 300円
↓ 値上げ後
正規価格 1000円 ー 変動コスト 500円 = 利益 500円(+200円増)
※例1)の価格を戻した時に同じ利益を得るためには60%までの売上減は許容されるので、売上が下がっても利益額が同じになる(300円÷500円=60%)
3.自社の顧客心理にあった価格戦略を考えてみる
顧客が考える心理から価格を決定するのも一つの手法です。
定量的裏付けや合理的な根拠も必要がなく、競合店舗の有無に関わらず、自社のノウハウによって価格を決定するパターンです。
では、顧客心理を把握する方法を考えてみましょう。
1)個数のまとめ買いや抱き合わせ販売
「○○個以上購入で○○円引き」「○○商品のまとめ買いで送料無料」「本体とオプション(またはおまけ)で○○円」など、
お得感を出すことでどの購買価格のパターンが最適化を試してみる。
2)NBブランド価値
「名声価格」と呼ばれるそのユーザーも認知しており、一定の価格帯の価値が標準となっている商品は、価格を下げなくても売れる(下げることによるリスクの方が大きい)可能性が高い。
競合店舗と同価格又はポイントや送料といった判断軸で選ばれるか、それとも商品の詳細説明が他社よりも優れているか、広告などのプロモーションが十分だったか、購入後のアフターフォローが充実しているか、など安売りはせずに顧客の購買ポイントを見極めたプライシングを行いましょう。
3)特定の商品の値下げによるクロス販売
「キャプティブ価格」という特定の商品の価格を下げて顧客を引き寄せるための価格設定により、商品単体の利益が出なくても
他商品を合わせて購入してもらうことでリピーターとなってもらうなど、利益を生む方法です
一つの単品で購入しないような商品を送料無料にするなども一つの手段です。
○○数限定、○○期間限定など、市場に影響を与えない範囲での値下げも有効な可能性があります。
他初回購入ユーザーは○○%クーポンを配布するのも、継続的に購入する商品一度知ってもらうことにより、リピートが見込めるかも知れません。
またより付加価値がある商品をクロスセル案内することにより、購買単価が上がる可能性もあります。
4)自社の商品と関係のないサービスから顧客心理を考えてみる
昨今増えてきたアパレル、高級時計、ブランドバックなどを「購入する」→「借りる」などのサブスクリプションでの購買ニーズも増えてきてきています。
(つまり買う人が少なくなって、借りる人は多くなっていれば、必然と売上が下がっている根拠となります)
通常の商品量を減らしたら、何倍も売れた(フレーミング効果)という少ない量をお買い得と思う購買心理のケースもあります。
○○円値下げの競合よりも、○○円値上げの店舗で購入した、などの商品や店舗レビュー、リピーターなどのユーザーもいます。
○○円の水を買うよりも、月額○○円のウォータサーバーを利用するケースも多いかと思います。
5)アンケートによる顧客心理を確認するを考える
購買ユーザーは価格については、「だいたい」のイメージを持ち、「それぞれ」の最適価格を持っています。
例えばAメーカーの炊飯器の価格は?と聞いてみると、それぞれ違う返答が返ってきます。
市場アンケートを実施する項目で「生活者の価格相場」を把握することもお勧めします。
例えば、○○という商品に対して、
・高すぎて買えないと思う(他店で安く良い物が変えると思い始める)価格
・ちょっと高くて買えないと思う(高いと感じ始める)価格
・ちょっと安い(安いと感じ始める)価格
・安すぎて品質に不安になる(詐欺、偽物と思い始める)価格
というアンケートを実施することによって、商品価格を○○にしたときに、各設定価格に対してどの商品の価格帯を選択するユーザーが多いかを把握することで、購買心理の上限や下限の相場感を知ったうえでプライシングすることも重要だと考えられます。
4.まとめ
市場の購買ニーズが常に変化するEC販売において、取り扱っている商品やカテゴリによっての最適な価格設定が決まっているわけではありません。
より多くの顧客に購入頂くためには、自社にあった最適な価格設定を見極めることや、継続的にリピートしてもらうことも意識する必要があります。
自社の価格戦略に課題のある方は、自社の価格設定が最適かを今一度見直し見るのはいかがでしょうか?
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