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EC価格競争の実態と流通対策費のリベート、拡売費について

公開日
2020年08月18日 02:20
最終編集日
2024年12月04日 14:57

EC価格競争の実態と流通対策費のリベート、拡売費について解説します。
これまでは流通業者(卸売、小売)の販促支援は実店舗が主体の流通対策費だったものが、新型コロナの追い風も含めてEC販売のデジタルシフトが加速し、インターネット上の棚割りの確保、販売力が強いAmazonなどプラットフォーム向けの広告費などの流通対策費や商談時の交渉が増加しているケースをよく聞きます。

プラットフォーム以外では、実店舗だけでなく固定客(会員)をECでも持つ家電量販店、ドラッグストアなど販売力の強い流通業者に対する流通対策費の増加と価格競争による不必要な値下げや安売りによってブランド価値が低下するなど様々な問題が見受けられます。

今回は主要なEC取引法人同士のEC特有の販売競争によって、どの程度の値下げや流通対策費のリベート、拡売費に影響を与える可能性があるか、についてまとめていきます。

流通対策費の現状とは

1)どのくらいの費用が使われているのか

マーケティング会社の調査によると、一般的に知られているテレビ、紙媒体、メディア、インターネットなどのプロモーション費以外の流通対策費が10〜15兆円以上の営業活動費があるとされています。

一般的にマーケティング、プロモーション費用とされている2019年日本の広告費を見ているとメーカー事業者に関連する業種の中で「食品」は増加、「化粧品・トイレタリー」「飲料・嗜好品」「流通・小売業」減少していることが分かる。

2019年の広告販売費の業種別増減比
電通の記事より抜粋

2)販促費の中でもリベート と拡売費の違い

主に消費材メーカー、小売の流通対策費の中で販促費の一部と言われています。

「リベート」とは、各流通事業者との取引条件によってメーカーから支払われるインセンティブとされています。

参考記事:独占禁止法におけるリベートの考え方

「拡売費」とは、値引きやクーポン、キャッシュバックなどのプロモーション(キャンペーン)の原資、棚割りを確保するなど便宜をはかるための直接的な資金として、メーカーが支払う費用とされています。

オルタナティブブログを参照

3)会計上のリベート処理

「売上割戻し(変動対価)」とも呼ばれ、「一定期間に多額又は多量な取引をした」流通業業者に対してメーカー側が「売上代金の返戻を行うこと」とされています。

取引金額を減額するものだけでなく、主な取引として、「キャッシュバック」「ボリューム・ディスカウント」「仮価格」等のメーカー事業者によっても様々な会計処理がされていると考えられます。

販促リベートのように必ずしも売上と連動していないことが多いことが多く、変動対価の確定が販売時から一定期間経過後になる達成リベート、販売促進費や広告宣伝費として「販管理及び一般管理費」に計上されるケースもあるとされています。

ひびき監査法人の公開資料から抜粋

オンライン販売における現状

消費者が商品を購入する理由や欲しい商品を探す手段として、主要なオンラインモールを選択するケースが多く、オンライン販売での値下げが増えるほど、各流通業者の値下げ比率も高くなり、流通対策費が増加することによって利益を圧迫することになります。

1)消費者行動におけるオンラインモールの選択

特に主要なオンラインモール3社に集中しており、「価格の安さ」「取り扱い商品の多さ」「ポイント付与・割引等」が選択と理由となっている。

特徴としては、価格が5〜10%上がっても「引き続きオンラインモールで購入する」という意見が多いことから、価格変動に対する消費者の理解が見受けられる。

2)メーカー(ブランド)事業者の現状

公正取引委員会が公表しているメーカー事業者へのアンケート資料から、オンライン販売のメリットとして「商圏・購入者層の拡大」「顧客ニーズの把握のしやすさ」、デメリットとして「商品の発送」「顧客との連絡コスト」「サイト運用コスト」を上げている。

選択的流通を実施している事業者も回答者全体の14%と少なく、これまでの商習慣から流通対策が整備されていない現状であると考えられます。

オンラインモール対してメーカー側が感じているメリット・デメリット

オンライン販売における制限事項からメーカーからの販売サイトのデザイン(外観、商品画像、説明文等)の要請の一方で流通事業者から「他小売店の販売価格」「他小売店が取り扱っている商品の取り扱い」の要請が多いことが分かる。

選択的流通の実態

流通業者への販売価格、広告・表示については「自社及び競争品の小売価格の把握」「把握のしやすさ」を上げており「ブランドイメージを損なわない価格」「一定価格以下では販売しない」要請をしていることが分かる。

価格競争、価格調査の動向

3)小売(リテール)事業者の現状

小売事業者が感じているメリットとして「商圏・購入者層の拡大」の一方でデメリットとして「運用コスト」「商品の発送」「顧客との連絡コスト」とメーカー事業者と同じ課題を上げている。

オンラインモールに対する小売事業者の考え

仕入れ先メーカーからの販売制限で「オンラインモールでの販売禁止」を上げており、販売サイトの「デザイン、外観、商品画像、説明文」についての要請が多いことが分かる。

オンラインモールにおける小売事業者のメーカーとの関わり方

価格自動更新ツールを利用している小売事業者は15%と少ないが、価格改定にツールを利用していると推測できる事業者90%と価格競争の実態を認識していると考えられます。

価格自動更新ツールの利用状況

4)プライスサーチforメーカーで取得した流通先の価格競争と値下げ競争の実態

弊社が独自に取得した家電製品のオンライン上の流通データの結果を見てみると、オンラインモールだけでなく家電量販店などの自社運営サイトとの価格競争が高頻度で行われていることがわかります。

(データ取得は1日1回の低頻度でも価格競争の実態が把握できます)

価格競争の実態状況

販売競争に影響を与える値下げの要因として、流通業者が「他店の価格を把握していない」「自動価格変更(追尾)ツールの利用」によって、消費者が納得して購入する販売価格より「下回った商品価格、ポイント値引き」で販売されているケースが多く、より販売価格の把握が重要になっていることがわかります。

EC価格競争の実態と流通対策は必要か?

ECの流通対策は実店舗よりも目に見えないスピードで販売競争が行われており、誰も望まない不利益を生み出す価格競争による値下げ、ブランド価値の増加により流通対策費の増加やリベートが発生するケースが想定されます。

1)オンラインにおける棚割りの重要性

これまで実店舗で行われてきた棚割り競争が、オンライン販売をしている流通業者でも当たり前のように行われており、流通対策費として拡売費の増加が避けられずECの流通対策がより重要になっていると考えられます。

2)新型コロナの影響によるデジタルシフトの加速と巣ごもり消費ニーズの拡大

外出自粛やこれまで実店舗でしか買えないと思っていた商品がECで買えるようになった(手軽に買えることを知った)ことにより、様々な消費ニーズが拡大しています。

例)オンラインモールの売上ランキング上位の商品例

「リモートワークのための機材や腰痛防止など」
パソコン、Webカメラ、イヤホン、Wifi機器、プリンター
座椅子、オフィスチェア、クッション

「自宅で過ごせる快適グッズ」
ゲーム(動物の森など)、ホームベーカリー、ホットプレート
ハンモック、マッサージ機、フィットネスバイク

「健康志向」
スポーツウェア・シューズ、ヨガマット 、体重計

「セルフケア」
電気バリカン、美顔器、頭皮エステ、ネイルポリッシャー

「感染防止対策」
マスク、除菌ティッシュ、うがい薬、除菌スプレー、クレベリン、体温計、空気清浄機など

「子供グッズ」
知育用品(パズル、ボードゲーム、百人一首、カルタなど)
トランポリン 、鉄棒、竹馬、リップスティック、見守りカメラ

3)インターネット検索におけるニーズの傾向例

体温計
2月から4月にかけて急激に上昇しており、6月以降も例年と比べてユーザーの検索行動が多い。

体温計の検索ボリュームの推移

体重計
体温計同様に2月以降急激に上昇しており、5月以降の検索行動も多い。
主に運動不足からフィットネスニーズの関連商品と同様の傾向にあると考えられます。

体重計の検索ボリューム推移

ホームベーカリー
2月以降の巣ごもり消費と思われる上昇が見られるが、6月以降は例年と同じ程度の推移となっており、商品によっては一時的な消費行動が窺える。

ホームベーカリーの検索ボリューム推移

4)公平な販売競争を阻害する値下げや安売り行為

新型コロナの影響や消費者のデジタルシフトの加速によって、ブランド価値の高い商品の検索行動の上昇や誰も喜ばない公正な価格競争阻害するような流通業者同士の値下げ、安売りによる「ブランド価値の低下」、マスクに見られる「高額転売」「抱き合わせ販売」など、「消費者へのデメリットを与えるような行為」は規制対象となるケースが多く、実店舗だけでなくオンライン上の流通業者の販売状況の把握も重要です。

4.まとめ

ECにおける流通対策費用のリベート増加を避けるためには以下の継続的な活動や対策に費用を当てることにより、商品企画、販売計画、商談、販促といった本来かけるべき業務に注力できるようになり事業全体の利益に繋がる事例が多く見受けられます。

  1. 自社製品のEC販売競争の実態を正確に把握できているか
  2. 主要な流通事業者の棚割り状況を定期的に把握できているか
  3. 主要な製品の流通状況、在庫切れによるロスがないか
  4. 一時的な需要拡大している商品への販売促進費の投下に注意が必要(特に5月以降の販売実績の傾向)
  5. 流通事業者間での不利益な販売競争による値下げ、ブランド価値低下していないか

など
弊社が提供しているプライスサーチforメーカーは、
「価格競争のプライスリーダー(最初に値下げした店舗)分析」
「保存したレポート条件を指定のメールアドレスへ定期配信」
などの機能が「定額プランで利用できる」メーカー(ブランド)専用サービスです。

プライスサーチではECの価格調査を自動化し、店舗毎の値崩れを可視化することが可能です。
無料体験もご案内しておりますので、ご興味のある方はお気軽にご相談ください。

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