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選択的流通の考え方
選択的流通とはメーカーが、一定基準を満たす流通業者に限定して商品を取り扱わせる場合、
基準を満たさない他の流通業者への転売を禁止することができるという制度です。
具体的には、設定基準が品質の保持、適切な使用の確保など、
「消費者の保護・利益(動物も含まれる)」を考えた際に
「それなりの合理的な理由」に基づくものと認められ、かつ、
「他の流通業者にも同じ基準が適用される」場合は、
特定の安売り業者が基準を満たさず商品を取扱えなくても問題ない、とされています。
上記について解説すると、
「それなりの合理的な理由」 → 「割とゆるい」すなわち、客観的に判断になる (事業者間の比較等)
「平等に設定」 → 「実質的に同様の基準」であれば問題ない
選択的流通に関する合理的な理由の例
1)フリーライダー問題解消 ※1)
2)ブランドイメージ確保
3)設備投資の回収
4)サービスの統一などの競争促進効果
※1)フリーライダー問題とは、
例えば、小売業者がある事業者のブランド商品について販売前に実施する販売促進活動によって、
既に需要が喚起されている場合を考えます。
このような場合、他小売業者は販売促進活動を行うことなく、
適切な商品説明やサポートがなくとも当該商品を販売することができてしまいます。
すると、いずれの小売業者も自ら費用をかけて積極的な販売促進活動を行わなくなり、
本来であれば当該商品を購入したであろう消費者が購入しない状況に至ることや
品質が確保できないことがあり得る。とされています。
選択的流通例(ガイドライン記載事項)
1)商品の説明販売を指示すること
2)商品の宅配を指示すること
3)商品の品質管理の条件を指示すること
4)自社商品専用の販売コーナーや棚場を設ける
等が挙げられています。
具体的な対策事例
繰り返しになりますが、
「消費者の保護・利益(動物も含まれる)」を目的として、
「それなりの合理的な理由」が必要になります。
※対策事例については、基本的な考え方であり、当社の最終的な見解を示すものではありません。
各取り扱い製品によって対策が大きく異なりますので、対策時は十分ご留意ください。
対策事例1) 搬入条件の確認が必要なもの
大型家電など消費者の搬入環境によって手配が必要な商品について考えられます。
(冷蔵庫、マッサージ機などやインテリア(ベット、ソファなど)
例えば、「エレベーターに入らない」「狭くて階段が登れない」「玄関から入らない」などの理由で
インターネットで購入して搬送した場合のリスクが高いことから有効だと考えられます。
対策事例2) 適切な商品説明が求められるもの
健康器具(吸入器、美容家電など)、通信機器(専門性の高いアンテナ設置用品や配線器具など)は、
同封されている説明書だけでは取り扱い方によって「初期不良を起こしやすい」
「一般ユーザーでは設置が難しい」などのリスクがあります。
購入後のアフタフォローにリスクが高く、適切な商品説明や案内ができる流通先のみに卸すことで、
消費者の保護に繋がると考えられます。
対策事例3) 保管状態や利用期限が短いもの
食品を例にすると、ペットフードの中でも
「無添加で賞味期限が短い」「高齢犬や病気等の健康状態によって、適切な商品をアドバイスする必要がある」「保管状況によって品質が悪くなる」
などの制限のあるものは、適切な商品説明や保管ができる流通先のみに制限をしやすいと考えられます。
選択的流通とは別に、適切な成分表記や説明が商品掲載ページにされているか、
もペットの安全性を確保するのに重要な要素になります。
対策事例4) アフターフォローが十分かどうか
大型の生活家電製品や取り扱いが難しい製品などの中で、
特に高単価の商品は消費者が長期間利用するケースが想定されます。
そのため、不具合があった際に適切なサポートの案内や製品保証といった品質を確保する必要があります。
既に不特定の流通販路から、適切な取り扱い説明やアフタフォローがなされておらず、
クレームの多い流通先を制限するなどの消費者保護の観点での対策が必要となります。
ECの流通課題として、Amazonにみられる「せどり」「利益目的での高額販売」など
不適切な流通先からのクレームをメーカーが受ける、製品を保証する、などの
リスクが高いものは対策が必要となります。
流通販路の制限が難しい場合、公認店制度をメーカー公式サイトに公開するなど、
「消費者が安心して購入できる」「サポート受けられる」などの情報発信も検討する必要があります。
まとめ
消費者保護の観点で安売り業者による商品販売に制限を加えることが可能となります。
しかし、「消費者の保護・利益のために全ての流通業者へ共通の基準」を導入した結果、
「安売り業者が商品を取り扱えなくなる」と言う順序が重要ということを意識しなければなりません。
消費者の保護・利益ではなく、
「安売り業者が商品を取扱えなくなることを目的」とした基準を設定、適用した
と捉えられると販売価格の拘束に該当し、違法の可能性があるため注意し。
選択的流通の手段だけでは、一律の条件設定や取引先との合意を得るまで
相当数の期間を必要とします。
まずは、自社製品の2次3次流通先や販路の把握や直接の取引販路での商談の中で、
取引先と協力することにより、適切な流通販路に整備することもお勧めいたします。
公正取引委員会が公開しているPDF版はこちら
(第2部 非価格制限行為の5項目19ページを参照)