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メーカー希望小売価格の提示は再販売価格の拘束にあたるのか?

公開日
2020年03月02日 03:25
最終編集日
2023年03月14日 18:27

再販売価格の拘束とは(独占禁止法20条)

再販売価格の拘束とは事業者が流通業者の販売価格を一方的に決定すること。
流通業者間の価格競争を減少、衰退させるものとして原則違法とされる。

再販売価格の拘束は、

「直接的な拘束」
「間接的な拘束」

の2種類に分けられます。

1)再販売価格の直接的な拘束とは、

この価格で販売せよ、と取り決めてしまうことです。具体的に言えば、

  • 価格調整に従うことを文書や口頭による契約で定めること
  • 価格調整に従うことへの同意書を提出させること
  • 価格調整に従うことを取引の条件とすること
  • 売れ残った商品を値引き販売させずに買い戻すことを取引の条件とすること

などが挙げられます。要するに、メーカーが示した価格で販売するようにさせる取り決めは原則としてNGです。

2)間接的な拘束とは、

価格調整に従わない場合に、経済的不利益を課す、あるいは課すことを示唆する等、何らかの人為的手段により価格調整に従わせることです。 経済的不利益とは、

  • 出荷量の削減
  • 出荷価格の引き上げ
  • リベートの削減

などが挙げられます。
もちろん、これの裏返しで、価格調整に従う場合に出荷価格を引き下げたり、リベートを増大させる等して利益を与えるようなことも違法となります。

直接的拘束の例間接的拘束の例
文書や口頭による取り決め出荷量の削減
同意書の提出強制出荷価格の引き上げ
価格調整に従うことを取引の条件にするリベートの削減
買い戻しを取引の条件にするリベートの供与

上記に無いような事例であっても、流通業者がメーカーの指定する価格で販売することについての実効性が確保されていれば、原則として違法となります。

しかしながら、再販売価格の拘束が「競争促進効果」「ブランド間競争」が促進され、商品の需要が増大し、消費者の利益の増進が図られ、再販売価格の拘束以外のより競争阻害的でない手段で競争効果が生じ得ない場合、「正当な理由」があるとされ例外的に違法とならないとされている。

3)「正当な理由」とは

1.再販売価格の拘束によって「ブランド間の競争が促進される」
2.当該商品の需要が増大し、「消費者の利益の増進が図られる」
3.他の方法によっては「当該競争促進効果が生じ得ない」
4.必要な範囲および「必要な期間の拘束である」
とされています。

また、メーカー希望小売価格を流通業者に通知する、流通価格を調査することはなんら問題ないとされている。

違法とされやすい価格の設定方法について

「〇〇円で売って欲しい」ではなく「だいたいこのくらいで売るのはどうか」と言えば、明確に価格を指示して拘束している訳ではないので独禁法に違反しないのでは?と考える方もいるかもしれません。しかしながら、公正取引委員会が作成したガイドラインはそのあたりも抜け目なく規制しています。

a) メーカー希望小売価格の〇%引き以内の
b) 一定の範囲内の価格(□円以上△円以下)
c) 事業者の事前の承認を得た価格
d) 近隣店の価格を下回らない価格
e) 一定の価格を下回って販売した場合には警告を行う等により、事業者が流通業者に対し案に下限として示す価格

なども販売価格の拘束と捉えられる類型として公正取引委員会が公表するガイドラインに挙げられているため、価格に関する表現がいかなるものであっても関係ないと考えるべきでしょう。

違法とされない行為

「○○で売っても利益が取れそうですよ」
と言った小売店側の利益になるような適切なアドバイスや
「売り手側の販売価格での買上」
は違法とならない、とされています。

a) メーカー希望小売価格の提示
b) 将来の製品価格の予想
c) 相手方の任意性確保されている状態での要請
d) 価格設定のアドバイス
e) 安売りの買上   等

売り手側との有効な関係性を継続するためには、売り手側や一般消費者の利益になるような違法性がない取り組みも重要と考えられます。

販売価格の拘束と判断された事例

やってはいけないことがわかったところで、実際に販売価格の拘束が行われていると公正取引委員会に判断されてしまった事例を見てみましょう。

大手アウトドア用品メーカーのA社は、平成28年6月、独占禁止法の規定に基づき排除措置命令を受けました。

その内容とは、A社は小売業者が翌シーズンに販売を行う際や、新規業者と取引を開始する際に、以下の販売ルールを定め、従わせていました。

  • 販売価格はA社が定める下限以上
  • 割引販売は他社の商品も対象にする、または実店舗における在庫処分を目的とする場合にのみ、A社が指定する日以降、チラシ広告を入れずに実施する場合のみ可

販売価格の下限を設定し、それに従わなければ契約を結べないという経済的不利益が示唆されており、これは明らかに販売価格の拘束となります。

まとめ

ガイドラインにも公表されている違反とされない例を元にすると、
「○○で売っても利益が取れそうですよ」
といった余計な値下げをせずに適切な市場の価格競争における販売価格のアドバイスが有効であれば、小売店側の自由な値決めの意思決定が確保されていれば、独禁法上の問題にならないと考えられます。

製品を供給しているメーカーだけでなく、小売店の事業利益も価格競争により圧迫されているケースが実態としてあるため、適切な流通対策と市場価格にあった適切な値決めが重要だと思います。

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