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確約手続きの概要と適用事例

公開日
2020年09月07日 15:24
最終編集日
2024年12月04日 16:44

確約手続きとは何か

確約手続きとは平成30年12月30日に施行された制度であり、TPP協定及びTPP11協定の締結に伴い、独占禁止法の違反の疑いのある事業者と公正取引委員会との間の合意により、競争上の問題の早期是正や協調的に問題解決を行う効率化のために事業者が自主的に解決を行う制度とされています。

確約手続きの通知を受けるとどうなるか

公正取引委員会から通知を受けた事業者が、違反の疑いの理由となった行為を排除するために必要な措置等を記載した確約計画(改善計画)を作成し、公正取引委員会がこの計画を認定した場合、「排除措置命令」「課徴金納付命令」を行わないこととなります。

ポイント

1)確約手続きの流れ

事業者が「確約計画」を自主的に作成・申請し、公正取引委員会がこれを「認定」するというプロセスを通じ、両者の「合意」によって違反被疑行為を解決する制度です。

①確約手続通知

「公正かつ自由な競争の促進を図る上で必要があると認めるとき」には、独禁法違反の疑いの理由となった行為をしている事業者に対して、違反被疑行為の概要・法令の条項等を「通知」(以下「確約手続通知」)

②確約計画の作成・申請

確約手続通知を受けた事業者は、違反被疑行為を排除するために必要な措置を、自ら策定し実施しようとするときは、通知の日から「60日」以内(不変期間)に、実施しようとする措置に関する「確約計画」を、自主的に作成・申請することができます。(独禁法48条の3第1項及び第2項)

③認定

確約計画が、違反被疑行為を「排除するために十分なものであること」「確実に実施されると見込まれるもの」のいずれにも適合すると認めるとき、確約計画を「認定」するとされています。

④排除措置命令及び課徴金納付命令が行われない

公正取引委員会が確約計画の「認定」をした場合、当該認定に係る違反被疑行為については、排除措置命令及び課徴金納付命令が行われない。

2)公正取委員会への相談

確約手続をより迅速に進める観点から、積極的に相談や情報提供を行うことが重要だとされています。

  1. 確約手続の対象となるかどうかの確認
  2. 確約手続に付すことを希望する旨の申し出
  3. 確約計画の内容や検討期間の確保等に関すること
  4. その時点における認定における論点等について説明する

確約手続を用いる場合は、上記のような相談を積極的に活用することが重要です。

3)違法性の高い行為は対象外

繰り返し違反でない私的独占や不公正な取引方法等において活用されることになります

  1. 入札談合、受注調整、価格カルテル、数量カルテル等(いわゆるハードコアカルテル)
  2. 過去10年以内に同一の条項の規定に違反する行為について法的措置を受けたことがある(繰り返し違反)
  3. 刑事告発の対象となり得る国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な違反被疑行為

確約手続きの適用事例

1)楽天トラベル

楽天トラベルの2019年4月上旬、宿泊料などの条件を競合サイトと同等以上とする「最恵待遇(MFN)条項」を含む契約をホテル・旅館と結び、事業活動を不当に縛った疑いで楽天を立ち入り検査が入る。

楽天は「MFN条項撤廃」「今後3年間は同じ制約を課さない」などの改善計画を提出したことで令和元年10月25日に初の適用事例として認定されたとされています。

2)Amazon.co.jp

令和2年9月10日、通販サイトでの値引き分の一部を納入元の事業者に「補填(リベート)」させたとして優越的地位の濫用の疑いから公正取引委員会の調査を受けていたアマゾンジャパンが、納入元への返金を含む改善計画を認定したと公表されました。

ベースコープ(協賛金)の支払い

まず初めに公正取引委員会によると、同社は2016年5月ごろから、日用品や小型家電などの納入元業者に対し、値引き額の一部補填や過剰在庫の返品に応じさせることや、また仕入れ価格の数%から10%の割合で「ベースコープ(協賛金)」と呼ばれる支払いを求めていた、とされています。

過剰在庫の返品

次に商品の在庫数量に仕入価格の変更前後の差額を乗じるなどして算出された額を、納入業者がアマゾンジャパンに支払う在庫補償契約や過剰な在庫であると判断した商品について、返品していることも違反被疑行為とされています。

金銭提供

また、共同マーケティングプログラム契約に基づいた提供すべきサービスの全部又は一部の提供を行うことなく、サービスの対価に係る金銭を提供させ、システムへの投資に対する協賛金などの名目で、アマゾンジャパンに支払わせていた。

認定された確約計画の内容としては、

「違反被疑行為を取りやめる」
「コンプラアンス体制の整備」
「金銭的価値の回復など」


が盛り込まれており、金銭的価値の回復については、現時点において、「納入業者のうち約1400社に対し、総額約20億円の返金を行う」と伝えられています。

これまでも「マーケットプレイス」の出店者に競合サイトと同等以上の条件で出品させる「最恵待遇(MFN)条項」などの疑いから公取委の調査を受けており、いずれも自主改善し、調査は打ち切られたとみられる。

一方で、上記のような各通販プラットフォームの上位表示、広告など特定の条件を満たした事業者(出品者)が優遇されるシステム上の仕組みの課題については触れられていないと見られます。

※その他の適用事例についてはこちら

確約手続きまとめ

確約手続きが認定されたことにより、違反の疑いの通知を受けた事業者は自主的に改善することによって、違法性の高い行為以外は「排除措置命令及び課徴金納付命令が行われない」可能性があります。

独占禁止法上で違反の疑いのある行為が心配される場合、公正取引委員会への相談することを推奨します。(匿名でも相談を受付してくれます)

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